明治6年、新築の家
            ~ 住まいの応援隊 小池 喜和三 ~

[ご主人とのつながり]

私の生まれ故郷である長野県の佐久地方にあるこの家には、87歳になるご主人が息子さん夫婦と一緒に暮らしています。一緒とはいっても息子さん夫婦は別棟での生活が中心なので、ご主人にとっては三度の食事が一緒というだけで就寝時などは一人暮らしです。

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ご主人は明治6年に作られたこの家で昭和の始めに生まれ、結婚をし、子供を育てました。奥さんを3年程前に亡くしましたが、その後も元気に農業を続けています。
建物は大きな民家で、座敷や奥座敷、囲炉裏を囲む居間、牛馬とも身を接した広い土間など、明治から昭和初期の生活が偲ばれます。戦後になると、住まいの近代化のもとで茶の間、台所、トイレ、縁側など現代風に改修されてきました。

ご主人から、古くから手を入れていない寝室が寒くて困るので暖かくしたい、という声が私に伝わってきました。佐久地方は冬季の寒さが大変厳しい所で、零下10度以下になる夜もしばしばです。

詳しい調査に伺い、寝室を見させていただきました。寒さを防ぐため、10帖ほどの部屋にカーテンやビニールシートがところ狭しと天井から下げてありました。畳敷の床は湿気で傷み、カーペットが重ねてありました。暖を取るのは電気毛布で、一晩中体に巻き付けている、とのことでした。
ご主人の話の中に「この寝室はかって子供部屋で、旧制中学の頃もこの部屋から学校に通った」との言葉が印象的でした。露出している梁や廻りの壁、建具などに長い歴史が見られました。
これらの仕上げを現代風にリフォームしてしまうと、築150年になる建物の良さが失われていく気がしました。建物の古い柱や梁を生かし、自然の素材による床材や天井材で、古民家の魂を再生することが大切だと思いました。

[大工さんとのつながり]

現在の住まいづくりは、大工職人の多くが伝統建築の技能を次第に失ってしまうような状況にあります。
古民家の魂を再生するには、大工職人の選任が重要になります。古民家改修の技量があり、愛着もある人を見つけ出し、工事費予算も含めて相談できることが必要になります。
何人かの大工さんの候補が上がりましたが、私の古くから知り合いの大工さんと相談し、了解していただきました。ご主人も同意しました。築150年の民家には柱や土台、敷居などに微妙な歪みが生じていました。その歪みを削るだけでなく調整しながらの工事が進みました。
暖かい寝室ができるということでご主人は毎日現場を覗き込み、大工さんの手元を見つめ続けていました。約1か月の工事期間でした。

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