読書ノート【地域を考える】

新宿地域交流館副館長 佐藤 拓

コミュニティデザインの時代
著:山崎亮 2012
中央公論新社 860円
新書版 272頁

本書は地域づくりの実例と重要性を述べたものである。建築デザイナー兼まちおこしのコンサルタントである筆者は、住民参加型のワークショップを全国で開いている。それは当初、地域住民の意見を建築物のデザインに反映させるためであったが、今日では地域課題の解決策を話し合う場になっている。筆者は住民の中に入り込み声を聞く活動を楽しんでいるようである。
将来の人口減少を踏まえ、筆者は住民が地域の将来について主体的に考えることの重要性を述べている。また、地域の将来の姿として中山間離島地域に着目し、そこでのワークショップで住民に自分たちの地域の課題について話し合ってもらう事例を紹介している。地方は衰退の危機にあり都市部も例外ではないため、その視点は先見的と言える。
そのほか住民参加のワークショップの進め方も記している。ただ、筆者は「コミュニティデザインの教科書は書けない」と述べており、体系的な手法は記されていないが、住民同士のつながりづくりのヒントにはなるだろう。

地域おこし協力隊
日本を元気にする60人の挑戦
編:椎川忍ほか 2015
学芸出版社 1800円
四六版288頁

地域おこし協力隊は、地方の住民とともに産業振興や生活支援に従事する人々である。隊員は国や自治体の支援を受けて地方に転居し、活動を始める。
この制度が始まった平成21年はリーマンショックによる不況の時期と重なり、新しい働き方を求める人が多かったことが推測できる。また、自分の力を故郷で試したいと考える人や、田舎で働きながら暮らしたいと考える人の存在がこの制度利用の伸びの背景にあるだろう。
本書では隊員や自治体職員の活動事例が60件ほど掲載されている。地域の資源を活かした特産品販売や観光案内、住民の送迎や食堂の運営などの生活支援、農地の開墾や空き家の活用など土地や建物の運用など隊員の活動はさまざまである。
読み終えて一番に思ったことは、隊員には人一倍の体力、知恵、応用力が求められることである。
気候の厳しい地域や整備が不十分な土地での活動は体が資本と言ってよい。また、新事業をおこすための経験や知識を前もって持っていなければならない。さらには新しい土地に溶け込み住民から仕事のノウハウ、歴史、慣習などを教わり、自分の活動に役立てていく力も不可欠である。
地域おこしとは持てる力を全て使わなければできない仕事である。しかし、困窮する地域を自分の手で変えることができる魅力もある。開拓者精神を持って一から活動したい人にとって大きなチャンスとなるはずである。

未来を拓く地域づくり
楽しく実践する12のヒント
著:福島明美 2014
かもがわ出版 1600円
A5版184頁

著者は松本大学で大学と地域の協働を研究する講師である。本書は筆者が長野県で関わった地域づくりや地域連携のヒントをまとめたものである。地域住民が活動を始める際に踏むべき手順、打ち合わせのノウハウ、地域づくりの実例が掲載されており、地域活動の初心者に役立つ内容となっている。
読み進めるうちに地域づくりにおける重要なキーワードがいくつも登場するが、その中でも重要なものを4つ挙げたい。それは「課題・テーマの共有」「仲間づくり」「情報発信」「楽しさ」である。
まず地域の人同士が課題や思いを共有しなければ地域づくりは先に進まない。そして学生、地域の機関、NPOなどの協力者を増やすことが活動を広げる近道である。また、本書では手順が詳しく記されていないが、情報を発信して活動内容を広く伝えることも世間の地域への関心を高めることにつながる。さらに、長く続けるためには楽しさが必要である。
筆者が現場で得た経験を中心に記されており、難しい内容も特段ないため読みやすい一冊となっている。