幸齢化を支える医学『公開講座シリーズ11』
交詢社2015 304頁

この本は医師による高齢者向け公開講座の講演録である。高齢者の病気、不定愁訴に対する心構えや体の仕組、治療法が専門医師により解説されている。
具体的に高齢者の複雑な鬱や白内障、難聴の最新治療、加齢変化による不定愁訴、そしてiPS細胞技術などが無学の私にも解りやすく理解できる内容になっている。
不自由さから解放され、少しでも快適に毎日を過ごせる幸せは、苦痛を虐げられた人だからこそ与えられる幸せだろう。そこに至るまでの過程に小さな命がたくさん費やされ、人間の為に役立ってくれているのだからこそ、本当に苦しんでいる人や目的を持って生きたい人に役立って欲しいと感じる。
非常に専門的な内容であるが、心臓についての講義の中でAEDの使用とその重要性について詳しく説明が行われている。
私自身、AED講習を受けていながら、実際その場に遭遇した場合、AEDを使う行動と判断が本当に出来るのだろうかと不安でならなかった。しかし、この講義のおかげで、65歳以上、5人に1人が心房細動を持っている事、心房細動から心室に伝わり心室細動が起きた時の危険性が良く理解する事が出来た。
救急隊が来るまでの時間が命を救う。AEDは改めて、素人である市民でも使える唯一の医療器なのだと感じた。
もう迷わずAEDと判断する事が出来ると思う。

【中落合地域交流館】芳賀容子

NHKスペシャル
『老衰死 穏やかな最期を 迎えるには』

近年、「老衰死」の割合が増加しているという。ここでいう老衰死とは、病気がないということではなく、直接的な死の原因が病気ではなく、老いや衰えによって死ぬことをいう。
老衰によって死ぬ数年前からは、それまでと同じように食べていても体重が減少していく傾向があり、死ぬ数日前には、全く食べなくなるという。食べなくなってから、胃ろうや点滴をしても、しなかった場合との死亡率が変わらないという研究結果も紹介されていた。そして、死の直前には、痛みに対する感覚もなくなっているはずだという。
自分が死を受け入れる前から体は死を受け入れる準備をしているということだろうか。死の直前には、体も心も死を受け入れる状態になっているのかもしれない。
ただ、家族はそうはいかない。大切な人の死が近づいた時、少しでも長く生きていて欲しいと願ったり、楽にしてあげたいと思ったりする。静かにただその時を一緒に待つというのは、家族だけでは難しいだろう。そばで、何もしなくていいんだよと言ってくれる専門家の存在が必要である。番組では、特別養護老人ホームでの看取りの様子が紹介されていたが、今後自宅での看取りに対応していくためには、自宅にいても家族のサポートまでできる体制づくりが求められる。
家族や自分の死について考える教育もしていかなくてはいけないだろう。自分の周り、もしくは自分の死に向き合わなければならなくなってからではなく、人が死ぬということについて、どんな風に最期を迎えるかについて、早い時期から身近なこととして考えていくべきだろう。
また、最期だけが穏やかにというのは無理な話なので、前段階として、病気にならないためや寝たきりにならないための予防も大切になる。

人生の最期が死なのだから、その一点だけではなく、そこにつながっていく人生と常に向き合っていなければならないということだろう。

【本部事務局】宮内梨香