写真でみせる回想法
編:志村ゆず他 2004
弘文堂 2800円
写真30シナリオ130頁

本書は介護の現場などで活用されている回想法の実践書である。回想法とは過去の思い出を語ることで話し手の心の安定を図ったり、複数名で語り合い交流を深めるための方法である。
回想法においてとても重要な役割を果たすのは写真である。高齢者の幼少の頃によくみられた生活風景などの写真を用いて当時の経験を語ってもらう。言葉のやりとりだけでは昔の記憶は戻りにくいが、昭和20年代などの写真を見れば自然と話が出てくる。たとえ普段口数が少ない人でも写真を活用すれば幼い頃の出来事は話しやすくなる。また、同世代の高齢者であれば家事の手伝いなど子供の頃に同じ経験をしている方々もおり、初対面でも打ち解けやすい。
しかし、回想法には気をつけなければならないこともある。若い頃には苦労した人も多く、良かった出来事だけでなく辛い経験もよみがえってしまうため、写真や話題は気持ちが前向きになるものを選択する必要がある。また、本書付録の写真は70~80代向けのものが多く、団塊世代に向けて回想法を実践する場合は社会がより発展した高度経済成長期以降の写真を用意する必要がある。
回想法は本書では高齢者のコミュニケーションを支援する方法として解説されているが、異なる世代の人々にとっては時代研究や高齢者に対する理解にも役立つだろう。大正・昭和を知るにはその時代を生きた人たちから話を伺うことが最も参考になるからである。

新宿地域交流館副館長
佐藤 拓

 

老人漂流社会
~親子共倒れを防げ~
NHK 2015.8.30

ここで取り上げられた子世代が自分と同じ世代であったことに、驚いた。介護というとまだもう少し自分には遠い話だと思っていたが、もう自分の世代の話になっていた。
親の介護という問題とセットで、子の収入、生活の不安定さがあった。親の介護を理由に同居をしても、親の世話をするどころか、親の負担になってしまう。
まだ、親の介護が必要になっていない場合でも、親の収入のもとに生活をせざるを得ない子がいる。
高齢者の生活や医療を社会がどう支えるかという話や中高年の非正規雇用者の生活が困難になっているという話は、別々に取り上げられることが多いが、実際には一つの家庭においてその両方の問題が存在している。そして、その数は今後も増えていくことが予想されている。
働く世代が働いて生活できる収入を得られなければ、社会は回らない、もしくはどこかに矛盾が生じる。
介護の担い手は不足しているにも関わらず、生活保護を受けるという条件のためだけに親子が同居できない。
いつまでたっても子が独立できずに、高齢の親が子を支えるために働き続ける。
現代社会では、人は孤立しているといわれているが、生きている以上どこかでつながっている。どこかで問題が起きたとき、その一つの問題点だけをみても根本的な解決にはつながらないのだろう。
介護という問題を考えるときは、当然ながらその担い手である子に起きている問題についても考えないと、本来助け合っていけるものが、今回のようにお互いに潰しあう結果となってしまう。
今、現状でできることを考えた時、助けを必要としている人が、その助けに辿りつけないという問題が常にある。本当に困った時に、どこに助けを求めればいいのか。助けを必要としている人が声をあげられる環境と、その人を見つけ出せる環境づくりが大事だ。

大塚本部事務局
宮内梨香