一.協同組合で働くこと、それは働く一人ひとりが地域と結ぶこと

【協同組合は「人間は平等なのだ」と思う地域住民たちが主体の事業体です】
東京高齢協は生協であり、協同組合です。株式会社の営利目的と違い、協同組合の最も大きな特徴は、人間は平等であると考え、地域や生活を良くしようとする住民・市民たちが地域で自ら出資して事業を立ち上げて協同運営し、その事業成果を出すことにあります。
協同組合で働くとは、地域の誰の何のニーズや願いを実現しようとしているかの不断の問いが出発点ですし、結局は生命線です。少なくとも、平等を阻害するような地域や社会の諸矛盾から目を背けることは協同組合の理念から外れてしまいます。

【協同組合は世界中にあり、各々が自立し連帯しています】
このような協同組合は、国際協同組合同盟(略称「ICA」)を結成しています。ICAは世界最大の非政府組織で、世界九十四カ国にあり、約十億人が組合員となっています。
一つひとつの協同組合が地域に根ざした当事者主体の自立した事業体であり、しかもそれらが地域や一国、世界で連帯しているという特徴から、国際連合(国連)は、世界の飢餓・貧困撲滅のための有力な主体者として協同組合に期待しています。東京高齢協も連合会組織を通じてICAにつながっています。

【協同組合には国際的に認められた運営原則があります】
ICAでは、近代協同組合の発祥と言われるイギリス・ロッチデール(成立一八四四年)の伝統を受け継いだ協同組合の運営原則を決めています。協同組合が協同組合として存在するためのものです。
内容は、①自発的で開かれた組合員制、②組合員による民主的統制、③組合員の経済的参加、④自治と自立、⑤教育・研修と情報、⑥協同組合間協同、⑦地域社会への関与の七つです。一般会社のようなカネと権限で駆動する組織ではないようにするために庶民の叡智で作り上げたものと言えます。

【世界には高齢協の事業性格に近い社会的協同組合があります】
イタリアに「社会的協同組合」というものがあります。一九七〇年代に拘束的な精神病院の存在に対し「自由こそ治療」の合言葉で、その廃止を訴えたのが始まりです。
当事者と支援者たちは一緒に地域で生きる糧を得るために事業体に協同組合方式を採用し、一九九一年に法を制定し、いまでは高齢者や、生きにくさを持つ年少者をも対象にして、一万以上の組合数、働く人三十万人となっています。一つひとつの組合は利用する人、働く人、ボランティア、さらには会社や自治体などの関係者が組合員になることができるよう、多元的組合員制度(マルチステークホルダーシステム)が法律になっています。

【事業所や働く一人ひとりが地域とつながることが大切です】
高齢協の介護事業等の性格はこの社会的協同組合の事業と似ています。ただ法律上は生協ですから消費生活者の協同組合です。しかし事業の充実のためには、利用者やその家族、地域の人たち、行政とのコミュニケーションが大切なことは言うまでもありません。
日本の法律ではイタリアみたいな組合員構成はできませんが、さまざまな運営方法で事業所での工夫は可能です。例えば「利用者懇談会」は既存の生協の伝統的な手法で、それに現場で働く人たちも参加する仕組みです。

二.協同組合の経営はみんなで考え、話し合い、行動すること

【「協同組合経営の深刻な弱点とは」という指摘があります】
いまから三十五年前、一九八〇年のICA総会で協同組合の強みと弱みを報告した人がいます。
その人、レイドロー博士は「協同組合事業の最も深刻な弱点は、協同組合における雇用者と従業員との関係である。(それは)一般的な私企業の雇用者と従業員の関係と、協同組合のそれとに何ら違いがないところにある」と指摘していました(「雇用者としての協同組合」より)。これは理事者や管理者(法律上は「使用者」に相当する)のあり方を問うとともに、働き方にも問いを発しています。

【「企業戦士」ではなく、市民のまま事業に従事する】
いまから二十五年前、バブル経済の最終盤、ある栄養剤の宣伝に「二十四時間、戦えますか」というのがありました。企業で働くものは「戦士」でした。
そもそも、近代経営組織(ライン・スタッフ論)の原型はプロイセンの軍隊組織にヒントを得たとも言われます。軍隊では上官の命令に逆らうことはあり得ません。反したら懲罰が待っています。 それをなぞった企業では、自ずと指示待ち人間が生まれます。レイドロー博士はそのことを指摘したのです。
協同組合の特性は、市民(住民)が市民(住民)のまま事業を行うことにあります。働く人も当然同じことが言えます。ここに特長と強みがあるのではないでしょうか。

【大切なことは自由・平等と自治、そして連帯です】
社会のあり方として最も基本的な理念は、メンバー(市民)の「相互の対等性(自由・平等)の尊重と共同で行う規範の定立(自治)」(大村敦志)から始まると言われます。
もちろん、非営利組織においても同様で、協同組合においては、組合員同士、協同組合と組合員との関係の出発点です。このような組織なら、全体方針も働く人を含めてみんなの手で作り上げることに優位性が生まれるわけです。
現場で働いている人は利用者の機微が分かるのですから、きちんと方針に反映する運営が重要です。協同組合の運動では、連帯を強調しています。それは連帯なき自立は孤立にすぎないし、冒頭の協同組合の理念の放棄につながるからです。

【自治には民主主義が結局は大事ですが、その要件は?】
民主主義を、単純な多数派支配の原理と言い切ったり、意見が通らないと「民主的でない」と吐き捨てたり、これを結構都合よく使う面があります。それだと結局民主主義は育たないと思います。
有名なダールというアメリカの政治学者は、ある結社(組織)に政治的平等(構成員の権利の平等性)が必要な条件だとの合意があるなら、理念型として断った上で、この民主主義の要件は有効に機能すると言っています。
①メンバーが決定に参加する平等の機会を実際に持っていること
②メンバーの投票が同じ重みを持っていること
③問題となっている方針とそれから生じる帰結について、メンバーが理解できる必要なあらゆる情報を得る十分な機会が与えられていること。
④メンバーが討議案件について、最終チェックができる条件にあること。
⑤(国家の場合にはあらゆる成人に以上四点が等しく認められること)
事業所運営や、理事会・総代会において実際上はかなりの困難を伴いますが、だからと言って一つでも放棄すれば、何のための協同組合か、元の木阿弥です。