人間、年とれば歯が駄目になる。現代はケア用品があふれ、それなりの手当もする。シニアもスルメをあてに冷酒を楽しめるが、古人はそうもいかない。

結びより はや歯にひびく 泉かな 芭蕉46歳
(泉水をすくって口に入れたら歯にしみた。)
衰ひや 歯に食いあてし 海苔の砂 芭蕉47歳
(奥歯で砂を噛んだときに身の衰えを感じた)
芭蕉50を前にして、歯周病だったのだろう。

一茶の場合は更に悲しい。49歳の我春日記。
きせるの中塞りてければ、竹をけづりてさし入置たりけるにつまりてぬけず、すべきやうなく、欠残りたるおく歯ニてしかと咥へて引たりけるに、竹ハぬけずして歯ハめりめりとぬけおちぬ。 あはれ、あが仏とたのミたるただ一本の歯なりけるに、さうなきあやまちせしもの哉。―数箇所略―
がりがりと竹かじりけりきりぎりす
nigaoe_kobayashiissa(きせるの中が塞ってしまったので、竹を削ってさし入れて置いたのが、詰まって抜けない、どうしようもなくて、欠け残った奥歯でしっかりとくわえて引っ張ったところ、竹は抜けないで歯がめりめりと抜け落ちてしまった。 あぁ、我が仏と頼みとしていた、たった一本の歯だったので、とんでもない過ちをしてしまったものだ。)

しかし、一茶は3年後に28歳の妻を得て初めて家庭を持ち64歳で亡くなるまで3人の妻を迎えた。歯なしの花婿一茶のたくましさは句風にも表れている。