伊古田俊夫著
『社会脳からみた認知症』
(ブルーバックス、本体900円)

北海道の勤医協中央病院名誉院長で、認知症サポート医である著者が書いた本である。「社会脳」とは今世紀に急速に研究が進んだ分野で、「脳は社会の関係性を反映し、その中で各部位がネットワーク活動している」と見る。認知症のさまざまな「奇行」は、その社会脳の障害によって説明できるようになった、というのがこの本の趣旨である。

「危険なものや危険な人の見分けができなくなる脳」「取り繕う脳」など、認知症の人が抱える困難の中心は、記憶の障害や知的能力の低下によるというよりも、周囲の人の気持ちや思いを理解できず、自分をも的確に把握できない点にある。

「認知症は社会脳の障害である」ならば、人間にとって暮らしやすい社会の実現こそが、社会脳の正しい活動を保証するのであり、認知症の予防でもあると締めくくっている。

岡安 喜三郎