イタリア料理店 「文流」 のスパゲティ

「文流」は一九七三年にイタリア書房という洋書店の元社長が小生の地元である高田馬場の駅前のビルで開店し、今も同じ場所で繁盛しているイタリア料理店です。
社会に出て二、三年たったころでしょうか、たまたまこの店を発見して入ったのですが、純白の壁を持つシンプルながら典雅な内装に感動しました(現在は改装されています)。洋書を飾った本棚がある半個室もしゃれていました。
1そして、この店で供された本格的なスパゲティを食べて、「スパゲティってこんなにおいしいものだったのか!」と驚嘆したのです。
また、この店で出されるサラダも卓上に置かれたオリーブオイルとビネガーをかけるという初体験の食べ方でした。
今では日本のあちこちにイタリア料理店があり、どこでもおいしいスパゲティが食べられますが、当時、スパゲティといえば街の洋食屋か喫茶店で出される大しておいしくもなく積極的に食べたいとは思わないものでした。最近、当時そのようなまずいスパゲティの定番だったナポリタンの人気が復活しているというニュースを目にしましたが、信じがたい気持ちです。
以後、主に会社帰りにこの店をよく利用するようになりましたが、そのうちこの店の味を自宅でも再現してみたいという思いが募って、店の人から材料を訊き出し(意外だったのは、麺はイタリアからの輸入品ではなく日本のメーカーのものでした)、店と同じ材料を買い揃えて自宅でも作るようになりました。
前述のとおり現在はおいしい店がいくらでもありますが、四十年以上も前にスパゲティのほんとうの味を初めて教えてくれた「文流」の存在は忘れられません。

信濃町シニア活動館 城戸幸彦