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多世代の福祉ニーズに応える ふくしの生協
2019-06-09

おふくろの味

 私の母は、洗濯は大好きだけれど、掃除が苦手というか片づけの出来ない人だった。料理も得意でなかったのかもしれない。家族に受けを取ると、しばらくは同じ料理が並んだ。
 そのころは食材が今ほど豊かでなく、子どもの私は何を食べても美味かった。アルミの大鍋にキャベツやモヤシなどの野菜を適当に放り込み、肉は豚小間が入っていたかもしれない。炒めて水を加え醤油で味をつけて焼きそば用の蒸し麺を入れる。
 子どもたち4人が囲むちゃぶ台の中央に鍋が置かれるころには、麺は汁気を吸収して一層太くなっている。そんなものを中華ソバと呼んで大満足であった。ずっと後になり、駅そばの北京亭で、柳のように細い麺と黄金色の澄んだスープに出会った時は、いささかショックだった。
 そんな母は献立に窮すると、すぐ揚げ物に走った。天ぷらに程遠いが、これだけは上手だった。わたしが好きだったのはかき揚げ。ザクザク切った長葱と桜エビだけの素朴なものだが、外側はカリッと内側はしっとりと葱の甘みが感じられる。
 時々、自分で「かき揚げもどき」を作ってみる。我が家の厨房には天ぷら油もサラダ油もなく、オリーブオイルとフライパン一つで作る。出来あがりはお好み焼きのようだが、目をつむって食べれば確かにかき揚げ、日本そばの上に載せて美味しくいただける。ただ、しっとり感ではどうしても母親に勝てない。

 おふくろの味をできるだけ継承しようとしてきたが、一度も作れないのが母のラーメン。
 コロッケもおすしも酢豚も、どうにか子供たちに二代目おふくろの味を食べさせてきたつもりだが、ラーメンだけは無理だった。これぞおふくろの味。
 麺は石田製麺所がおきまりで、メンマもしっかり塩出ししてから味付けをする。スープはいたって簡単。チャーシュウにする豚の煮汁をベースにしたしょうゆ味だ。少し甘いのがなつかしい。ネギとゆで卵をのせて一丁出来上がり!
 一杯ずつ作る母の手間などお構いなしにおかわりしていた家族五人。兄に負けじと頑張って二杯食べると動けなくなったことも遠いむかし。

料理手帖(①千夢 ②メンキチ)

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