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多世代の福祉ニーズに応える ふくしの生協
2020-01-15

伝えていく味

 新年を迎えるといつも思い出すことがある。

 幼いころ、12月26日は餅つきの日だった。夜が明けるころ、家中に薪を燃やした煙くささが充満する。土間でもち米を蒸しているのだ。板の間には大きなのし板。横にはあんこ、きな粉、おろし大根が大きな鉢に用意されている。土間の臼に蒸したてのもち米が入れられ、父の杵つきが始まる。まずは、お供え用の一臼。お供えを丸めるのはかなり難しい。床の間用、神棚用、台所用などお供えの数も多い。

 次は、朝ご飯用に一臼。ここであんこやきな粉、おろし大根にあつあつのお餅を入れる。餅つきはもち米を蒸す時間が必要なので、あの頃は時間がかかった。年の瀬の一大イベントだった。のし餅二臼分、合わせて四臼分の餅が出来上がるのは昼前になる。もち米を洗って水につけるのは母の仕事。前日には台所に大きな桶が並んでいた。

 大晦日は、年越しの膳。一人ひとりのお膳にお刺身、たらの煮つけ、きんぴらごぼう、とんかつが並ぶ。たらの煮つけは、すけそうだらを輪切りにして甘辛く煮たもの。白身の魚で身離れがいいので、来客時にも重宝されていた。翌日は煮凝りの中にたらの目玉が残っていた。母の味付けは評判が良かった。

 元旦は、お雑煮。黒豆、きんぴら、タコの酢の物、かまぼこもある。お雑煮は、大根、ぜんまい、かまぼこ、ちくわ、白菜を煮干し出汁で煮て醤油で味付け。餅は26日についた切り餅を焼いて入れる。上にいくらと三つ葉をのせるようになったのは、わたしがもう少し大きくなってからだった。

 年末年始の味を母に食べさせてもらったのに、わたしはどれだけ伝えているのだろうか。餅つきもない、たらもなかなか買えない、黒豆もついつい買ってしまう。

料理手帖(FK)

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