新潟県十日町市。棚田が点在する美しい集落が夫の故郷だ。収穫期には兄から新米がどっさり届く。

精米したてのこしひかりは、ふっくらつややかで甘い。美味しいお米が豊富にあるので、と始めた弁当生活も23年。家族が増え、生活スタイルが変化するなかで弁当箱の数は増えたり減ったりした。現在は自分と二人の娘、時々近くに住む両親の分を合わせて五個作る。

我が家は休日に総菜を作り置いて朝詰めるだけの超時短、スピード節約弁当。ご飯を冷ましている間に、次々とおかずを放り込んでいくだけ。朝、冷蔵庫のタッパーから総菜を幾つか選び、ご飯の隣に大きなおかず、緑の野菜、黄色の玉子と順に並べる。唐揚げはむね肉で塩味、玉子焼きは甘く。好みのおかずを箱庭に詰め込む。きんぴらや青菜のお浸しで隙間を埋めて完成。最後に必ず梅干しを一つ。

紅い梅干しをのせると故郷の食卓を思い出す。広い板張りの床下には保存食が大切に並べられていた。畑の野菜を収穫し、山菜を採る。大きなすり鉢で胡麻をすり、自家製味噌で胡麻和えにする。干したぜんまいを水で戻し、油揚げと醤油、みりんで煮含める。白米と味噌汁と季節の野菜を少しだけ。自給自足の丁寧な生活。時間がゆっくり流れていた故郷。

時短レシピに徹する東京での日々に「豊かさ」とは何かとふと考える。

お天気を気にしながら梅を干したり、ぬか床をのぞいたり。そんな暮らしに憧れつつ、今日も弁当をカバンに押し込んで慌ただしい一日が動き始める。